無邪気な罠 30000hitのフリリクに便乗したものです。 ベジブル、悟チチ、カカベジ←の微裏要素がございますので、苦手な方は自粛して下さい。 今日は恒例のCAPUSLE CORP.でのバーベキューパーティ。『やっと温かくなったから』とブルマが張り切って皆を招いたが、当日は春一番が吹き荒れ、肌寒い日となった 「今日はちょっと失敗だったわぁ〜」 諦められないブルマの頼みで一旦はセッティングしかけたものの、やはり無理があるということで、直ぐにバーベキューセットは撤収された 「せっかく孫くんが来てくれたのに」 「んー?肉食いたかったけどなぁ」 「大丈夫よ。中でもできるから。皆を招待したんだから、責任持つわ」 「ほんとか?オラもう倒れそうだからよー」 「大げさね」 ブルマは陽気に笑ってキッチンに向かい、中の焼肉パーティに既に準備を切り替えたチチの元に向かった 「チチさん、さすがに手際がいいわねー」 「うちはサイヤ人だらけだから」 「尊敬しちゃう。あたしなんてとてもベジータの食べる量を一人では無理だわ」 談笑している間にもどんどん準備は進み、しっかり換気システムの整った部屋に炭焼きコンロが用意された 「ベジータ〜。ベジータってば」 「何だ、煩い」 当然あちこちでの和気あいあいとした準備にこの男が参加しているはずもなく、ブルマの大声に渋々自室から出てきた 「ほら、今から焼肉パーティよ。早く」 「……それがどうした」 「今食べないと晩御飯ないんだから」 ブルマは不機嫌そうなベジータをものともせずにニッコリ笑った 「おー、ベジータ。起きたんか?」 「寝てない!!カカロット、貴様ここで何をしてやがる」 「あたしが招待したに決まってるでしょ?」 「俺はカカロットと飯なんぞ食わん!」 「別に孫くんと食べなくていいいわ?ただ、皆と一緒に食べてくれないと面倒なの」 ベジータはブルマの言葉に舌打して、無言で脇をすり抜けて、ダイニングに向かった。ブルマはその後姿にイーッと舌を出して、悟空の腕を取った 「どうしたんだ?」 「いいじゃない、腕組むくらい」 「ああ…別にいいけど」 「いいの、ベジータはヤキモチなんて妬かないから」 「ヤキモチ?」 「わかんなきゃ別にいいわ」 ブルマはそう言って悟空と腕を組んだまま、ベジータに続いてダイニングに入った 「ブルマ、もう始めてるぞ〜」 「ブルマさん、お肉美味しいです」 クリリンヤムチャから声がかかる中、ブルマは悟空の手を引いて自分の隣の席に座らせた 「ブルマ、ここはベジータが座るんじゃねぇのか?」 「ベジータは孫くんと食べたくないって言うから、仕方ないじゃない。あたしは久し振りに孫くんと話ししたいもん。あ、チチさん、少し借りてもいい?」 「ええだよ」 飲み物を持って最後に席につこうとしたチチは、必然的にベジータの隣に腰を下ろしながら苦笑いした 「孫くんに比べるとかなり愛想のない夫だけど、お貸しするわ」 「おらはチチは貸したくねぇぞ?」 「悟空さ////」 悟空の言葉に真っ赤になったチチを見て、ブルマはニヤニヤ笑った 「いいわねー。愛されてて」 「やめてけれ、ブルマさ。それにブルマさだって……」 『ベジータさに愛されてるだよ』と言い掛けたチチだが、隣で明らかに不機嫌そうな男を見て、言葉を切った 「ふーんだ。でもたまには言ってくれなきゃ分からないのよ。ま、いいわ。食べよう、みんな」 「おおー。食うぞ!」 「ご、悟空さ、ほどほどにな」 「いいのよー。久し振りにいっぱい食べる孫くんみたいから。思いっきり食べて」 「いっただきまーす」 ブルマとベジータのいつもの小競り合いに少々顔が引きつっていた他のメンバーも、悟空の子供のような掛け声に大笑いした 明るい笑い声が響く中、眉間に皺を寄せた男をチラリと見てブルマは溜息をかみ殺した 直ぐ隣にいた悟空はブルマの表情が微かに曇るのに気づいたが、何も言わず、目の前の肉や料理に没頭することにした 「食った〜。最高だなぁ」 「良かったわ」 「ん?ブルマ、おめぇ焼いてるばっかりで、ほとんど食ってねぇだろ?ホラ」 「ちょ、孫くん///」 「何真っ赤になってんだ?」 ブルマは悟空が肉を差し出してきたのを見て、赤くなった。だが、あまり照れすぎるのも逆におかしいと思い、ブルマは頬が益々赤らむのを意識しながらも、悟空の箸から肉をパクリと受け取った 「うめぇだろ?」 「うん……」 「オラもういっぺぇ食ったからよー。なんならもっと食わしてやろうか?」 「いい、じ、自分で食べるから!!」 「ふーん?遠慮すんなよ」 「あーあ。悟空、お前酔っ払ったな?たったあれだけなのに…」 「んー?」 「飲ませたの?」 ブルマは困って頭をかくクリリンを軽く睨んだ 「いや、ちょっとだけですよー。この梅酒あんまり旨いから……」 「だからって……」 「何もめてんだ、おめぇら?ブルマ、ほらもっと食えー」 「ちょ、孫くんやめて///自分で食べるから」 さらに肉を差し出しニコニコ笑う悟空にブルマは慌てて言った。だが、悟空は少しふくれっ面になり、恨めしげに肉を眺めていた 「じゃ、これで最後ね」 「おお!ホラ、あーん」 「孫君////」 「悟空さ……迷惑だって」 「なんでだ?あ、チチぃ。おめぇもベジータにやってもらえよ。今、入れ替わってからな」 「カカロット!!」 「悟空さ!!!」 向かいのテーブルから勢い良く二つの椅子が倒れ、ベジータとチチは同時に叫んだ 「おめぇら息あってんなー」 「ふざけやがって……」 少しオロオロしているブルマを見て、チチは何でもないという風に手をヒラヒラと振った。ベジータは不覚にも赤くなった顔を隠すように部屋を出て行った 「あーあ。怒らせちゃった」 ブルマが本格的な溜息をついて言うと、悟空はカチャリと箸を置いた 「……孫くん?」 「怒らせたかったんじゃねぇのか?」 「悟空さ、何言って……」 「別に。オラちょっとベジータと話してくっから。チチ、ここ座れ」 「分かっただ…」 チチは首をかしげつつも、悟空の言葉に俯いたブルマが気にかかり、悟空と入れ違いに隣に座った 「ブルマさ?大丈夫け?」 「うん……孫くんったら、大人になっちゃって」 「ええ?」 「うふふ。見くびってたみたい。ごめんね、人の旦那さんを使っちゃって」 「ええけど……何のことだべ?」 「チチさんは、いいなぁ……こんな馬鹿なこと考えないのよね」 「ブルマさ……」 チチはブルマの腕にそっと手をかけ、ちらりとクリリン達に目をやった 「ブルマさん、俺達コーヒーもらっていいですか?」 「あ、うん……あの……」 「大丈夫だよ。勝手しったる元我が家だから、俺がやる」 クリリンとヤムチャは顔を見合わせて軽く頷き、ブルマとチチを残して出て行った 「ブルマさ、今日は変だべ?」 「うん……。孫くんとチチさんを見てると、羨ましくて。あたしもこんな風に大事にされたい…ってね。だから、ちょっとヤキモチ妬かせたかったの。孫くんが気づいてるとは思わなかったけど」 「ブルマさのこと大事に思ってるからだよ、悟空さは」 チチの言葉にブルマは不思議そうに首をかしげた 「変な意味じゃねぇだ。悟空さにとっては一番古い付き合いはブルマさだから。多分辛そうなのは嫌なんだべ」 「いい人ね、チチさんが羨ましいわ」 「ベジータさだって、同じだよ。悟空さは修行ばっかりで、家族と過ごす時間なんてなーんも考えてねぇだよ。今日だってここに連れてくるの苦労しただ」 「そんなのベジータだって……」 「ベジータさは何にも言わないだけで、ブルマさが頼めば黙って傍にいてくれるだよ」 チチの言葉にブルマは、元々違うものを比べようとしている自身の子供っぽさを苦笑いした 「ありがと……どんなに孫くんが素敵でも、ベジータと変わって欲しいとか思わないのに、馬鹿だったわ」 「無いものねだりだ。オラも一緒だよ」 「苦労するわね、サイヤ人の妻って」 大げさな溜息をつくブルマに、チチは軽くウィンクした 「でも、地球の男とは比べられねぇだ」 「ふふ。そうね。ちょっとベジータに謝ってくる。何を謝られてるかも分からないかもしれないけど」 「それでもええだよ」 「孫くんも呼んでくるわ。チチさんに返さなくちゃ。ありがとう」 「どういたしましてだ」 ブルマはニッコリ微笑んで小さく手を振るとベジータの部屋へと向かった その頃悟空は…… 「何しに来やがった、カカロット」 「おめぇに話があんだよ」 ダイニングから仏頂面で自室に戻ったベジータは、後を追うように入って来た悟空をきつく睨みつけた 「貴様とする話しなどない。殺されに来たなら別だがな」 「………」 ベジータの言葉にいつもなら苦笑いで答える悟空が真剣そのものの顔をしているのを見て、舌打ちした 「おめぇ、ブルマを泣かせるなよ」 「何?」 「あいつはよ……ちょっと度が過ぎるくれぇ自分に自信があんのに……おめぇの気ぃ引きたくて、オラにわざわざくっついたりしてよ。あんなブルマはらしくねぇから、オラ嫌いだ」 「……貴様に言われる筋合いはない。ブルマが俺の気を惹きたくて馬鹿な真似をしたければ勝手にすればいい。時間の無駄だ」 ベジータは内心の動揺を悟られないように努めて冷静な顔で言った。悟空は黙ったままベジータに近づくと、相手の直ぐ目の前に立った ベジータは自分をどこか冷めた目で見下ろす悟空に戸惑いながら、思わず後に下がりそうになるのを踏みこたえた 「おめぇが興味ねぇんなら、オラがもらってもいいか?」 「……何?」 「ブルマだよ。おめぇが泣かせるなら、オラが大事にすっから」 「……っ貴様…」 カッとして殴りかかろうとした手を悟空はあっさり掴んだ。そしてそのままもの凄い力でベジータの体を壁に押し付けて、驚く相手の唇に深く口付けた 「……っ!!はぁ…はなっ…」 なんとか身を捩ろうとするベジータだが、骨が軋むほどの力と、無理矢理絡め取られる舌の動きに体から徐々に力が抜けていった 「はなせ…っ…んんっ…」 やっと解放されたと思った瞬間、信じられないことに悟空の手が着ていたトレーナーの下から滑ってきた ベジータが何が怒っているのか理解できず狼狽している間に、悟空の手は腹をすべり胸の突起に掠めるように触れた。そして再び唇を塞がれて、声もあげられずにいると、部屋の入り口で甲高い叫び声が響いた 「きゃぁっ!!な、何やって……」 全身の力が抜けそうになっていたベジータだが、女の驚愕の声に反応して隙の出来た悟空をなんとか押しのけた 「そ、孫くん…ベジータ……」 「ブルマ。こ、これは……」 青ざめて震えながらも、ふらふらと部屋に入ってきたブルマは、震える手でドアの鍵をかけた ベジータはブルマの目に大粒の涙が浮かぶのを見て、紅潮した顔を背けた 「な、なんで……ベジータ…」 「…違う……誤解…だ」 とにかくブルマに近づきながら、ベジータは自信も微かに青ざめて絞り出すように言った 「……これが望みじゃねぇのか?」 「孫くん?」 「カカロット!!」 驚いて顔を上げたブルマが見たのは、いつもとは全く異なる雰囲気を漂わせた幼馴染の姿 「ブルマ……」 「近寄るな、カカロット!!」 ブルマの方に一歩悟空が足を進めると、ベジータはブルマを抱き寄せて悟空を睨んだ 「ちょ、ベジータ////」 「やかましい!ブルマ、貴様は俺のものだ…誰が幸せにするだ!!カカロットなんぞに指一本触れさせん」 「……///」 尋常ではない空気の中ながら、初めて聞くベジータのストレートな言葉にブルマは場違いなほど嬉しくなり、頬を染めた 「ブルマ、ヤキモチなんて妬かせてもいいことねぇだろ?」 「え?」 ベジータをじっと見ていた悟空が、突然穏やかな笑顔になって、ブルマは戸惑った 「おめぇがさっきやたらオラにくっついてたのは、ベジータにヤキモチ妬かせたいからだろ?」 「うん……ごめんね。変なことに利用しようとして。まさか孫くんにばれるなんて思わなかったの」 「そんくれぇは分かるぞ」 悟空はそう言って明るく笑った だが直ぐに真面目な顔になり、ブルマを真っ直ぐ見つめた 「悪かった…おめぇの大事なベジータにあんなことして。おめぇが部屋に近づいて来ているのが分かってたんだ。ちょっとやり過ぎちまって、ごめんな」 「……それはいい、けど…なんであんな…」 悟空の言葉にブルマとベジータは顔を見合わせた。ベジータが何も言わないので、ブルマが当然の疑問を口にした 「んー?ベジータへのおしおきと…おめぇにも…だな、ブルマ」 「?」 「いくら本気でなくたって、大事なもんにベタベタされたら嫌だろ?多分、何にも言わねぇだろうけど、チチだってな……」 「ご、ごめんなさい。あたし、自分のことでいっぱいいっぱいで……それに…チチさんが羨ましくて、少しだけ意地悪したかったのかも」 「ははっ。だからお返しだ。余計な小細工なんてせずに、おめぇはいつでも自信たっぷりにベジータを見てろよ」 悟空の言葉に赤くなりながらも、ブルマはベジータを見た。ベジータは何とも複雑な表情で二人の会話を聞いていたいが、いきなりブルマに口付けられた真っ赤になった 「ブルマ!!」 「だーめ。いくらあたしのせいでも、孫くんとキスするなんて!!これならチチさんとの方がまだいいわ…」 「カカロットが勝手にしたことだ!!」 ブルマはいつになく焦りまくったベジータにニヤリと笑ってからもう一度触れるだけのキスをした 「勝手にって言っても、あーんな腰砕け許せない」 「ななななな////」 「なんだ、ベジータ?気持ちよかったんか?でもよー、ヤキモチ妬くにはあんくれぇしねぇとな?うーん。オラもちょっとブルマが羨まし……分かったって。怒るなよ」 悟空は調子に乗ってからかっていたが、ベジータのあまりにもの凄い形相に顔を引きつらせた 「じゃ、後は頼むな、ブルマ。オラ、殺されねぇうちに退散すっから」 「はいはい…あのね、孫くん。一つだけ忠告していい?」 「なんだ?」 「ふふ。いくらヤキモチ妬かせる為って言っても、男同志でああいうことはちょっと危ないのよ?」 「へ?」 悪戯っぽいブルマの笑みに、悟空は呆けた声を上げた。ベジータは悟空のその様子を見て、嫌な予感でいっぱいになりながら、口を開いた 「まさかカカロット……男同士という点には疑問はなかったのか?」 「ああ。別に関係ねぇのかと……ただよー、チチ意外とは駄目だって言われてっから、男とも女ともしたことねぇだけだ」 「やっぱりね」 ブルマは苦笑いして、『これからはチチさんの言うとおりにね』と言って、悟空を部屋から追い出した 「ごめんね、ベジータ」 「ふん……とにかく、今後は何か下らんことを思いついても、カカロットだけは巻き込むな」 「そうね。そこらの女がきたって負けないけど、孫くんには勝てない気がするわ」 「ブルマ////!!」 「うふふ。下級戦士には譲らない。あたしの王子様だもん」 ベジータはとことん振り回されている自分を笑いながらも、ブルマを引き寄せた うっとりと目を閉じた女の瞼に口付けながら、思いがけず蘇った悟空とのキスの感触を消し去るように、愛しい女の体に深く愛情を刻み始めた ベジータの部屋からかなり離れたところまで来ると、悟空は一度だけ振向いた。そしてどこか寂しげに小さく呟いた 「……オラだけ宙ぶらりんだな」 だが、廊下の先で自分を待ってくれていた愛らしい姿を見て、悟空は地に足のついた幸福が目の前にあるのを感じ、そっとチチの肩を抱いた 「……仲直りできただか?」 「ああ。心配いらねぇよ。オラ……」 「悟空さ?」 「なんでもねぇ。オラにはチチだけだな」 「……分かってるだよ」 「家……けぇるか?」 「そうだな」 短く答えたチチの髪を梳きながら悟空は何も言わずにCAPUSLE CORP.を後にした。そして瞬間移動ではなく、温もりを確かめるようにチチを抱きしめて、日の沈み始めた空に舞い上がっていった―――。 end ◎捧げ文;◎ 螺良崎様、この度は30000hitsお礼フリリクありがとうございました。いや、確か『カカベジのヤキモチネタで。裏は掠める程度。』というリクでしたね(遥か彼方をみるbacon) 明らかにベジブルですね。これは……いや、何故かどんどん途中から話の展開が変わってしまって。気がついた時にはあちこちにタラしっぷりを発揮した悟空みたいになってました。すいませんm(__)m こんなものでもよろしければ、どうぞお持ち帰り……ゲフゲフ。感想だけでも、ぜひ(@_@) お礼の言葉。 bacon様〜〜!!このような素敵なお話を私目のために作ってくださって、本当にありがとうございます!! も、超嬉しいです。 リクエストしたまんまでしたんで、本当に感激です。 嬉しいです!! はややや・・・他にも頂いた素敵なお話がありますね!早く皆様にご紹介せねば!! では、もう一度ありがとうございました。 |