しん様より

囚われの過去
なんと憧れ小説サイト様の4000hitを踏んでしまいました!!
ラディッツとの思い出を回想するベジ。ベジブルで裏がありますので苦手な方は回れ右。



囚われの過去
暗闇。

光など、存在しない惑星。

この星の住人は目が無い代わりに、身体から発する超音波で相手を見極める。

地球で言えばモグラ。

男も女もない軟体生物。

何故この星が売れるのか、当時の派遣戦闘員は疑問に思ったが、直ぐに彼らは消息不明になった。






寝苦しい。

うっすらと目を開けると、見慣れた淡い桃色の天井が見えた。

自室の寝室。

隣には、安らかな寝息を立てる妻がいた。

安堵の溜息が出る。

身体にまとわり付く汗が気持ち悪かった。

妻を起こさぬ様に静かにベッドから抜け出す。

寝室に備え付けのシャワールームに入った。

頭から熱い湯を浴びる。

嫌な夢を見た。

忘れたつもりだったが、記憶の奥底に眠っていた様だ。

不快感が頭の中を支配している。

拭いきれない。

未だ付着している感覚に、無意識に強く肌を擦った。

何度洗おうが何度皮膚を擦ろうが、消える事の無い不快感。



消えろ!!



願えどもその願いは叶えられなかった。

うずくまる。

擦った腕から赤い血が流れ、排水溝に湯と共に吸い込まれていく。

何もしていないのに、とてつもない疲労感にベジータは溜息を吐いた。

シャワールームを後にし、時計を見る。

午前2時。

眠りたくなかった。

だが身体は睡眠を求めている。

ソファーに座ったまま、ベジータはいつの間にか深い眠りに堕ちた。






奈落の底にでもいる感覚。

サイヤ人の視力をもってすれば、光が無くとも目は見える。

消息不明の戦闘員からの通信はなく、何の資料もないままにこの暗黒の星に寄越された。

草も木もない荒れ果てた大地。

その地下に、奴らは潜んでいた。

下の方に消息不明の戦闘員の亡骸が転がっている。

力が入らない。

四肢につけられた輪は、力を奪うのか、全く身動きが取れない。

宙に浮いた形で囚われていた。

何がどうなったのか冷静に把握する。

何の情報もないまま、この星に寄越された。

高く売れる。

それだけだった。

着陸してナッパとラディッツは偵察に行った。

ベジータは一人、大気成分や土壌調査を行なっていた。

スカウターには何の反応も出なかった。

突如、地面に引きずり込まれた。

為す統べもなく、深い奈落へ誘われた。

泥の中でもがいているようだった。

息も出来ず、いつしか気を失った。

そして今に至る。

目の前に、蛍光色に発光する物が現れる。

ベジータの周りを一周すると、人型に姿を変えた。

目はない。

口らしき物がにやりと笑う。


「サイヤ人、滅んだ筈が、浅ましく、生きていた。面白い。」


鈴が重なったような声。

喋れるのかとベジータが思う。


「何故、フリーザが、この星を欲しがるか。地下に、豊富な、エネルギーが、あるから。大勢の、仲間、死んだ。」


尚もぐるぐるとベジータの周囲を回る発光体。

ベジータは鼻で笑った。


「貴様らの事情など知るか。」


「お前の、仲間、来ない。実験、使う。お前、例外、無い。」


人型の発光体はアメーバー状になる。

ベジータはそのアメーバーに頭から全身包まれた。

撥ね返そうにもエネルギーが無い。

鼻孔から口から耳から目から、ずるずると侵入される。

声も出せない。

形容しがたい悪寒。

苦しさに嫌悪に不快感に、くぐもった呻き声を上げる。

全身の穴という穴から侵入された。


「ベジータ!?」


はっと目を開ける。

蒼い瞳が覗き込んでいた。

ソファーの上で、ブルマが心配そうにベジータの頬を撫でる。

また夢。

忘れ去りたいあの感覚。

何故、忘れられないのだろう。

悲痛な黒瞳を、苦悶の表情を、妻は悟ったであろうか。

あの時から既に25年は経っているというのに。

うなされていたベジータは、再び汗の不快感に襲われる。

まだ眠ってから2時間しか経っていない。

外は静かな闇だった。


「腕…血が出てるわ。また、無理に洗ったの?」


ブルマが未だ血の滲む腕に触れる。

幾度と無く夫が繰り返す無意識な衝動を、ブルマは気が付いていた。

ベジータは無言でシャワールームへ入る。

こんな顔は見せられない。

鏡に映るベジータは、消耗仕切っていた。

眠りたい。

だが、眠るのが恐い。

またあの夢を見るからだ。

気持ちが悪い。

捕えられ、強さも何もかも砕かれた初めての瞬間。

それは確実に潜在意識に恐怖として植え付けられている。

まだ若かった所為でもあるだろう。

恐いもの知らずだったのだ。

壁に手をつき、片手で顔を覆う。

熱いシャワーが代わりに泣いている様だ。


「ベジータ?大丈夫?」


ブルマがそっと扉を開けた。

ベジータは目線だけブルマに向ける。

ブルマは胸が締め付けられた。

何も語らない夫は、時に何かに怯えている。


「…もう、出なさいよ。」


ブルマがシャワーの蛇口を閉める。

身体を拭き、ベッドに座らせ、腕にシート型外傷治療薬を貼る。

終始無言のベジータに、ブルマはそっと口付けた。


「もう少し、眠って。もう嫌な夢は見ないわ。」


ベッドに横になり、ブルマはベジータの黒髪を梳く。

その心地よさに、ベジータはブルマをやんわり抱き締めた。

唇を重ねると、先程までの不快感が和らいでいく。

その感覚に、ベジータはブルマの唇を貪った。

汚らわしい物が剥がれ落ちていくようだった。

赤い唇から吐息が漏れる。

その声を聞きたくて、己の安堵を求めて、ベジータは白い肌に吸い付いた。

柔らかな、掌にしっとりと吸い付く肌。

欲して止まない滑らかな肢体。

手で、唇で、舌で、彼女の性感を探し当てていく。

濡れた秘部を指で押し開く。

とめどもなく溢れる粘液を見て、ベジータは歓喜に目を細めた。

指を入れれば肢体がうねる。

中で動かせば嬌声と粘液が溢れ出る。

ベジータはほんのり桃色に染まったしなやかな両脚を限界まで開き、己を前振りなしで突き入れた。

ブルマが仰け反る。

いびつな形のソレを、余す事無く包み込む。

子宮口を先端で押し上げると、更に締め付けが強くなった。

表皮が擦れる度に新たな快感がベジータの背中を突き抜ける。

本能に任せて擦り続けた。

肌がぶつかる音。

滴り落ちる粘液の卑猥な音。

そしてブルマの性感による快楽に啜り泣く声。

全てが内混ぜになって、ベジータの思考を真っ白にしていく。


「くっ…!」


眉間に皺を寄せ、淫らな快楽に目を細める。

背筋から脳天へ電気ショックの様な強烈な射精感。

吐き出すほんの一瞬、動きが止まる。

全てを絞り切る内壁の強さに、何度か自身を擦り合わせてから一番奥で最後の一滴を吐き出した。

既にブルマは意識が無い。

乱れた息を整えながら、ベジータは横たわる。

眠れそうだった。

あの夢は見ないだろうと思った。

ブルマをそっと掻き抱き、こめかみに軽く口付ける。

彼女の甘い香りがとても落ち着く。

そのままベジータは目を閉じた。




『なぁ、王子。』


懐かしい声がした。

笑っている。

あの時、囚われたベジータを救出に来たのはラディッツだった。

王子の世話人だったナッパはベジータに頭が上がらなかったが、ラディッツはまだ青二才だったベジータを弟みたいに思っていた様だ。

下級戦士だったが、幼い頃から生死を共にしてきたのだ。

サイヤ人らしからぬ家族の情を少し持ち合わせていた。

ベジータはいつも彼を罵り嘲笑ったが、ラディッツは笑っていた。


『それで王子の気が紛れるならいいさ。』


彼の口癖だった。


『なぁ、王子。いつもみたいに笑えよ。』



笑えるか。



『何でだよ。もう、あの星は無いんだぜ。』



この俺が、サイヤ人の王子であるこの俺が、囚われ、凌辱されたんだぞ。



『でも王子は生きてるじゃねぇか。』



……。





『俺はあんたらが生き返らせてくれるかと思ってたけど、死んで正解だったぜ。』



何故だ。



『どうせ生き返ったって、またフリーザか誰かに殺されたさ。』



それで、貴様は地獄行きか。



『まあな。もう直ぐ魂を洗われるんだとよ。王子が来る迄待てなかったのが残念だな。』



けっ、いい迷惑だぜ。



『王子…、あの時はまだガキだったんだ。いつ迄も囚われてんじゃねぇよ。』



何?!



『確かにガキん時にゃキツイ体験だよな。悪夢も見るさ。』



………。



『俺は王子と組めて楽しかったぜ。それでいいじゃねぇか。』



楽しかっただと?



貴様を見殺しにした俺と居て、楽しかっただと?



『戦いで敗れれば死ぬのがサイヤ人だろ。俺はらしくなかったけどよ、最後は戦士として死ねたんだ。別に悔いはねぇよ。』



…忘れられると言うのか



あの記憶を。



『それでも、プライドは無くさなかっただろ?誇り高い王子。』



………。



『ナッパがよ、王子の期待に添えられなかったって、うるせぇんだよ。会えたら慰めてやってくれ。』



お断わりだ。



『言うと思ったぜ。ま、王子らしいけどな。俺は行くけどよ、カカロットの事、よろしくな。』



ヤツは貴様なんぞ覚えておらん。



『だろうな。まぁ、いいさ。少しは気が紛れたかい?王子様よ。』






また、笑っていた。






悪夢は見なかった。

代わりに懐かしい男を見た。


「…馬鹿ヤロウめ。」


窓から差し込む朝日に向かってベジータは呟いた。

ブルマが目を開ける。

夫は窓の方を向いているので表情は解らないが、きっと眠れたのだろう。

微笑んで頬にキスをした。


「トレーニング、今朝は行かないの?」


「…ああ。」


返事をし、ベジータはブルマに抱き付いた。


「たまにはいいだろう。」


ベジータが囁いた。

起きるにはまだ早い。

ブルマはいつもより少し優しい夫のぬくもりに、再び目を閉じる。

彼が悪夢にうなされる事も、自虐行為に似た衝動も、なくなる事を願いながら。











***お礼の言葉***
しん様、突拍子も無いリクだった上、ラディを絡めて裏、何て・・・。
なのに、なのに!!こんなにも素敵なお話を書いてくださって、螺良崎は感激です!!
本当にありがとうございました!!

このお話に触発されて描いた漫画
興味が沸きましたらば是非に。